日本におけるポテトサラダの歴史は長い。しかし、ここ数年で起きた地殻変動は従来の「マヨネーズ味の白和え」的な郷愁を根底から覆した。引き金を引いたのは、スペインやイタリアのバル料理が日本のストリートに完全に定着したことだ。小皿料理(タパスやチケッティ)の主役として、オリーブオイルやハーブ、そして塩漬けの魚介が日常の選択肢に入り込んだ。
食品産業全体を見渡しても、単なる時短や安さではなく「日常のなかの一杯をいかに豊かにするか」という情緒的価値へのシフトが鮮明だ。缶詰や瓶詰めのアンチョビを買い置きし、自分好みのつまみを仕立てる行為そのものが、現代人にとって手軽でクリエイティブなリフレッシュとして機能している。