春先から初夏にかけて開催される日本グランプリシリーズ(織田記念、静岡国際、木南記念、水戸招待など)の現場では、日本選手権の出場権を巡る壮絶なドラマが繰り広げられます。取材班が目撃した現場の空気感は、華やかなスタジアムの歓声とは裏腹に、極限の緊張感に包まれています。
「あと0.01秒、風が0.1m足りなかった……」。ミックスゾーン(取材エリア)でうなだれる実業団選手の姿は珍しくありません。特にエントリー締め切り直前の公認記録会では、標準記録突破のみを目的にペースメーカーが配置され、選手全員がターゲットタイムだけを見つめて疾走します。ある有力指導者は次のように胸中を明かしています。
「日本選手権に出られるかどうかで、選手生命や所属企業での契約更新すら左右される。当落線上にいる選手にとって、春先の数週間は食事も喉を通らないほどの重圧です」
さらに、エントリー締め切り後に発表される日本選手権 エントリーリスト 速報を待つ選手たちの精神的負荷も甚大です。「自分はターゲットナンバー枠内の何番目に滑り込めるのか」「他地区の記録会で誰かが逆転記録を出していないか」など、SNSや陸上専門コミュニティでも当落予想が飛び交い、リアルタイムでリストが更新されるたびに歓喜と絶望が交錯します。