インターネット上の一部ブログや掲示板では、『おかえりモネ』の期間平均世帯視聴率が16.3%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)に留まったことを指して、「低迷」「期待外れ」といった短絡的な言説が散見されます。しかし、メディアデータと視聴構造を丹念に紐解くと、この言説がいかに実態から乖離した誤解であるかが浮き彫りになります。
第一に、2021年はテレビのリアルタイム視聴からタイムシフト視聴、さらには動画配信サービスへと生活様式が急速にシフトした過渡期でした。当時本格稼働していたNHKプラスにおいて、『おかえりモネ』は朝ドラ歴代最高レベルの配信視聴数を記録しています。出勤前や通学途中にスマートフォンでじっくり噛みしめるように視聴する若年層・現役世代を大量に獲得していたのが実態です。
第二に、作品の性質そのものが「安易な盛り上がりを意図的に排除した静謐なリアリズム」であった点です。ヒロインが感情を露わにして叫んだり、劇的な事件が矢継ぎ早に起きたりする従来の朝ドラフォーミュラを排し、被災地にいなかったことへの罪悪感(サバイバーズ・ギルト)や、天災と向き合う人々の心のグラデーションを克明に描きました。
結果として、放送終了後も熱心なファンによる考察がネット上で途切れることなく続き、ギャラクシー賞をはじめとする権威ある賞レースで高い評価を獲得しました。「数字が低かったから失敗」という評価は、現代の視聴環境の多様化と作品の本質を見落とした浅薄な見立てに過ぎません。