ボールチップを閉じる作業において、熟練作家と初心者の決定的な分かれ道となるのが、工具の当て方と加圧の分散です。美しく完璧な球体に仕上げるには、「段階的ローリング加圧法」を取り入れる必要があります。
加工の第一ステップでは、半球のカップの角を無理に合わせようとせず、平ヤットコの平らな面をチップの両サイドに平行に当てます。この時点では決して握りこまず、カップ同士が「触れ合う程度」まで約70%の力でゆっくり閉じます。ここでカップのフチが綺麗に噛み合っているかをルーペや目視で確認してください。
第二ステップは、外周からの均等プレスです。正面から挟むだけではカップの先端が潰れて平べったい楕円になってしまいます。そこで、平ヤットコを少しずつ回転させながら(90度向きを変え、さらに斜めから)、カップの外周を撫でるように軽く数回に分けて挟み込みます。この多角的な加圧によって、左右の金属が隙間なく寄り添い、既製品のような滑らかな真球が完成します。
仕上げの段階では、飛び出しているフック(カン)の部分を処理します。カニカンやアジャスターを繋ぐため、フックを前後に倒して隙間から金具を通すか、丸カンを中継させるのが一般的です。フックを曲げる際は、根元から強引に引っ張るのではなく、丸ヤットコまたは平ヤットコの先端でアーチを描くように丁寧に倒し込むことで、金属の破断を防ぐことができます。