一本の花を包む行為は、実は大束を作るよりも難度が高い。植物の造形美を極限まで引き出すフラワーアーティストの東信(Azuma Makoto)や、北欧と日本の感性を融合させたボックスフラワーで知られるニコライ・バーグマンらの仕事を見ても明らかなように、現代の花の表現は「余白」をいかに美しく切り取るかが問われる。
公益社団法人日本フラワーデザイナー協会(NFD)の指導現場でも、単に花を包んで隠すのではなく、茎のカーブや葉の陰影、花びらのテクスチャーを立体的に見せるアプローチが重視されている。包装紙の折り目一つ、リボンの結び目の角度一つで、花の表情は劇的に変わる。一輪花束(シングルステムブーケ)とは、削ぎ落とされたミニマリズムの中で花と対話する、極めて構築的なアートフォームなのだ。