ドキンちゃんのアイデンティティを語る上で欠かせないのが、しょくぱんまんへの一途な恋心と、神出鬼没なコキンちゃんの存在です。
まず、長年議論の的となっているドキンちゃんとしょくぱんまんの恋の結末について考察します。ドキンちゃんはしょくぱんまんを「しょくぱんまんさま」と呼び、部屋中にポスターを貼り、手作り弁当を渡そうと奮闘します。しかし、この恋が成就することはありません。生物学的・食品衛生的な設定として、「カビや細菌(ドキンちゃん)が純白の食パン(しょくぱんまん)に触れれば、パンは腐ってしまう」という決定的な壁が存在するためです。
やなせ氏はこの恋路について、「絶対に結ばれないからこそ、純粋で美しい片思いであり続ける」と明言していました。しょくぱんまんもドキンちゃんの好意に薄々気づきつつも、紳士的な態度を崩しません。この切ない距離感こそが、作品に漂う詩情の源泉となっています。
一方、物語をさらに賑やかにするのが、2000年代後半に登場したコキンちゃんです。コキンちゃんとドキンちゃんの血縁関係についてネット上では「実の妹なのか?」という疑問が頻出しますが、公式設定上の定義は「妹分」です。バイキン星からUFOに乗ってやってくる点は同じですが、実の姉妹であると明言された戸籍のような関係ではなく、「同じ星の同族で、妹のように可愛がられている存在」と解釈するのが正確です。ドキンちゃん自身がコキンちゃんの自由奔放さに頭を抱える姿は、まるで現実の姉妹関係そのものといえます。