本作の中盤、ヒロが見せる極端な攻撃性は、ディズニー作品の主人公としては異例の暗さを孕んでいます。キャラハン教授が兄の死に対して「あれは奴自身の選択だ」と冷酷に言い放った瞬間、ヒロの感情は決壊しました。
タダシが組み込んだ緑色の「ヘルスケア・チップ」を無理やり抜き取り、赤色の「戦闘データチップ」のみで稼働させたベイマックスに命じた「キャラハンを殺せ」という凶行。このいわゆる「闇落ち」描写は、SNSや当時のレビューでも「小さな子どもが泣き出した」「ディズニー映画とは思えない殺意の生々しさ」と大きな物議を醸しました。
しかし、ドラマ構造の観点から見れば、この闇落ちは絶対に必要な通過儀礼でした。ヒロは科学を「他者を破壊する道具」に変えかけた瞬間、仲間のワサビ、ハニー・レモン、ゴー・ゴー、フレッドたちに止められ、ベイマックスの中に残されていた「タダシの記録動画」を見せられます。兄がどれほど人を助けるために情熱を注いでいたかを思い出すことで、ヒロは自らの過ちに気づき、真の精神的自立を果たしました。暴力の連鎖を断ち切るカタルシスを描くために、制作陣はあえてギリギリの暴力性を描いたのです。