傷心の時期を経て、渡瀬恒彦が1980年に静かに再婚した相手こそが、当時OLだった「いほ(い保)」さん、すなわち渡瀬いほさんである。大原麗子という大スターとの破局直後だっただけに、メディアの関心は一気にこの一般女性へと注がれた。
だが、いほさんは決して表舞台にしゃしゃり出ることのない、慎み深く聡明な人物だった。京都での撮影が多く多忙を極める夫を陰で完璧に支え、温かい家庭環境を構築していった。彼女の素顔について、当時の撮影スタッフや近しい関係者は「とにかく気立てが良く、渡瀬さんの激しい気性を包み込むような温かさがあった」と振り返る。表舞台の喧騒から離れ、安らげる場所を得た渡瀬は、役者としてもより一層の深みと重厚感を増していくこととなった。