水族館のガラス越し、あるいは海中で見かけた平たい魚が「エイ」なのか「マンタ」なのかを判別する際、注目すべきポイントは極めて明快です。生態系における役割と進化の方向性が異なるため、頭部周辺の形状に決定的なサインが現れています。
最大の手がかりとなるのがエイとマンタの口の位置です。砂泥底に生息するアカエイなどの一般的なエイは、腹面(お腹側)の平らな部分に口が配置されています。これは海底に潜む貝類やカニ、エビなどを真上から覆いかぶさるように捕食するための構造です。ガラス面にペタッと張り付いて「顔」のように見える愛らしい部分は、実は「鼻の穴(鼻孔)」と「口」であり、目は背中側に位置しています。
一方、マンタの口は頭部の真正面(先端)に大きく開いています。さらに口の両脇には、海水を口の中へと効率よく流し込むための角のような突起「頭鰭(とうき)」が2本備わっています。水族館で泳ぐ姿を下から見上げた際、頭の先端にスプーン状のヒレを前方に伸ばし、大きな四角い口を開けていれば、それは間違いなくマンタです。
また、遊泳スタイルにも歴然とした差があります。一般的なエイは胸ビレの外縁をヒラヒラと波打たせるように動かし、海底を滑るように這って進むか、砂に潜って休息します。対照的にマンタは、巨大な胸ビレを鳥のように上下へ羽ばたかせながら、外洋の中層から表層を止まることなく優雅に旋回し続けます。水族館の水槽底にじっとしているか、中層をダイナミックに浮遊しているかを見るだけでも、現場での識別は容易です。