近年の夏期高温化において、日本古来の「干しネギ(乾燥苗)」栽培が改めて脚光を浴びています。京都を中心とする関西地方で受け継がれてきたこの手法は、干しネギの植え付け時期である8月中旬から9月上旬に合わせて苗を仕立てる高度な栽培技術です。
作業の流れは合理的です。7月上旬、畑で育った九条ネギなどの葉ネギを一度根ごと掘り上げます。土を綺麗に落とし、束ねて風通しの良い日陰の軒下に1ヶ月ほど吊るしてカラカラに乾燥させます。初めて目にする人は「こんなに干からびたネギが生き返るのか」と驚愕しますが、植物生理学的にはこれこそが究極の防衛体制なのです。
乾燥ストレスに晒されたネギは、細胞内の水分をショ糖やアミノ酸などの浸透圧調節物質に変換し、休眠状態に入ります。この干からびた苗を晩夏から初秋の畑に植え付け、一雨浴びせると、休眠から覚醒した苗が一斉に純白の新根を展開します。通常の青苗を植え替える場合に比べ、軟腐病などの土壌病害を回避できる確率は約70%も向上(各県農業試験場データ参照)。夏の猛暑で苗を枯らしがちな家庭菜園愛好家にとって、干しネギ栽培は最も理にかなった選択肢と言えます。