彼女の宝塚人生を語る上で絶対に外せないのが、2022年から2023年にかけて上演された退団公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』およびメガレビュー『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』です。本編『ディミトリ』では、ジョージア王国の忠臣アヴァク・ザカリアン役(本役)など要所でドラマを引き締め、観客の感情を揺さぶる重厚な演技を披露しました。
そして何より劇場を震撼させたのが、ショーのフィナーレを飾るパレードのエトワールへの抜擢でした。通常は娘役のトップシンガーが務めることの多いエトワールを男役が務めるケースは極めて異例であり、劇団側からの絶大な信頼の証でもあります。
大階段の真ん中でマイクを通し、ホール全体を包み込むように響き渡った彼女のハイトーンと豊かな声量は、まさに有終の美を飾るにふさわしい奇跡の瞬間でした。客席中を総毛立たせたその圧巻の歌唱力は、宝塚の歴史に輝く名シーンとして今なお語り草となっています。