コンクリートに囲まれた大都市の中心街や住宅街のベランダで、「なぜこんな場所に青いアゲハ蝶が?」と驚いた経験がある方も多いはずです。これには確固たる生態学的理由があります。
アオスジアゲハの幼虫は、クスノキ科の植物(クスノキ、タブノキ、シロダモ等)の葉のみを食べて育ちます。実はクスノキは、大気汚染や潮風に極めて強く寿命が長いため、昭和から平成にかけて日本の都市計画における「街路樹」「公園樹」「学校のシンボルツリー」として全国で大量に植樹されてきました。
さらに、古くから神木として神社仏閣の境内に植えられてきた歴史もあります。つまり、都市緑化政策と神社の社叢(しゃそう)によってクスノキが街中に豊富に存在することが、アオスジアゲハが都心で大繁殖している直接的な要因です。
アオスジアゲハは飛翔能力が極めて高く、時速20km前後の猛スピードで樹冠を飛び回ります。普段は高い梢の上で生活しているため人間の視界には入りにくいのですが、給水やツツジ・ランタナなどの吸蜜のために地上近くへ降りてきた一瞬に、私たちは奇跡的な出会いを果たしているのです。