年末のニュースを彩る契約更改の風景。札束が飛び交う華やかなセレモニーに見えますが、その実態は企業と業務委託契約を結ぶ個人事業主による血の滲むような査定交渉です。プロ野球選手の契約更改の真相を知るには、球団が独自に構築しているポイント査定システムの存在を理解しなければなりません。
球団の査定システムは、打率や本塁打、防御率といった主要タイトルだけでなく、「得点圏での安打数」「走者を進めた進塁打」「ホールドや登板イニング」「ファインプレー数」など、チーム勝利への貢献度が細かく数値化されています。下交渉の段階で提示される金額に対し、選手側は自身の貢献度をアピールして上積みを要求します。近年は公認代理人(弁護士など)を同席させてメジャーリーグ流の論理的交渉を展開する選手が増加しており、かつてのような「情や義理」による年俸アップは激減しました。提示額に納得できなければサインを拒絶する「保留」を選択しますが、球団側も年俸枠の上限を設定しているため、冷え切った空気の中で複数回にわたる押し問答が繰り広げられます。
そして、契約更改と並んで選手たちを苦しめるのが、プロ野球選手の年俸の仕組みと税金というシビアな現実です。
プロ野球選手は労働基準法上の「労働者」ではなく、所得税法上の「個人事業主」です。そのため、年俸は給与所得ではなく「事業所得」として扱われます。累進課税制度により、年俸が4,000万円を超えると所得税の最高税率45%が適用され、そこに住民税10%が加算されるため、所得の半分以上が税金として徴収されます。さらに、消費税(個人事業主として受け取った報酬に係る消費税の納税義務)や個人事業税(3〜5%)も課されます。
ここで最大の落とし穴となるのが、「住民税の後払い方式」です。例えば、2年目に大活躍して年俸1億円に跳ね上がった選手が、3年目に怪我や不振で年俸2,000万円に大減俸、あるいは戦力外通告を受けたとします。しかし、3年目に請求される住民税は「1億円を稼いだ前年の所得」をベースに計算されるため、手元に残る現金が納税額を下回り、一瞬で資金ショートや破産危機に追い込まれるケースが後を絶ちません。一流選手たちが節税のために個人事務所(マネジメント会社)を設立し、公認会計士や税理士と顧問契約を結ぶのは、自身の資産を守るための必須防衛策なのです。