ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「高齢の親が急に食器を落とすようになった」「夜中に起き出して意味不明な言動をするが、認知症の始まりか」といった相談が頻繁に寄せられています。しかし、この初期段階に潜む最大の盲点は、羽ばたき振戦に伴う意識変容が「老衰」「うつ病」「認知症の急激な進行」と誤認され、適切な医療機関へのアクセスが遅れる点です。
特に肝性脳症の初期(昏睡度I〜II)では、以下のような非典型的な精神神経症状が先行します。
- 睡眠パターンの逆転:昼間に強い眠気を訴えて傾眠状態になり、夜間に覚醒して徘徊や不穏状態に陥る。
- 性格の変化・感情鈍麻:普段温厚だった人が無気力になったり、急にだらしなくなったり、些細なことで怒りっぽくなる。
- 軽度の構成失行:時計の文字盤を描くテストや簡単な計算(100から7を順に引くなど)が急にできなくなる。
- 特有の呼気臭:肝不全では硫黄化合物に似た「甘酸っぱい異臭(肝性口臭)」、尿毒症ではアンモニア臭が息から漂う。
「認知症の薬を増量すべきではないか」と家族が迷っている間に体内のアンモニア値が200μg/dL以上に急上昇し、昏睡状態(昏睡度IV〜V)に陥って気道確保が必要となる悲劇が後を絶ちません。羽ばたき振戦は単独で発生するのではなく、こうした認知機能の揺らぎと常に連動しているという事実を認識しておく必要があります。