ネットの掲示板やSNSでは、こびとづかんを指して「ただの悪趣味な悪ふざけ」「子どもが泣き出すトラウマ本」といった表層的なラベルが貼られる場面が散見されます。しかし、そうした見解は本シリーズが持つ本質的な構造を見落としています。
最大の誤解は、コビトが魔法や超能力を使う「メルヘンな妖精」として描かれているという認識です。なばたとしたか氏の描写は徹底して冷徹な生物学の筆致に基づいています。食物連鎖の環に組み込まれ、弱肉強食の摂理に従い、時には病に倒れ、糞をし、異性をめぐって争う――。この生々しさこそが核にあります。
従来のファンタジー作品が排除してきた「生物としての生々しいリアリズム」を正面から描写しているからこそ、幼少期の子どもたちは画面の中の架空生物ではなく、庭の石をひっくり返した裏に蠢くダンゴムシと同じ地続きの存在としてコビトを捉えます。怪奇趣味ではなく、本物の野生への入り口として機能している点が、20年にわたり支持基盤を拡大し続けた真因です。