この記号が持つ学術的・公的な正式名称は「同の字点(どうのじてん)」です。文脈や研究分野によっては「重ね字(かさねじ)」「畳字(じょうじ)」「送り字」とも呼ばれます。
歴史の起源をたどると、そのルーツは古代中国の甲骨文字や金文にまで遡ります。当時の中国では、同じ文字を2回連続で刻む手間を省くため、文字の右下に2本の短い横線「=」を刻印する表記法が用いられていました。この「=」の反復符号が時代を経て草書体へと変化し、同じという意味を表す漢字「同」を極限まで崩して殴り書きした筆致と融合した結果、現代の「々」の形状に落ち着いたと伝えられています。
日本においては、平安時代や鎌倉時代の古文書・日記文学の時点で、すでに崩し字としての反復記号が広く浸透していました。手書き文字の効率化を極限まで追求した当時の公家や武士たちの知恵が、数百年後の現代社会にそのまま引き継がれているのです。
名字の代表格である「佐々木」における「々」の意味も、この歴史的背景と軌を一にしています。滋賀県近江八幡市を発祥とする名門・佐々木氏は、もともと「佐々貴」などと表記されていましたが、筆写の手間を省く過程で「佐」に同の字点を添える表記が定着しました。戸籍法上、人名に記号は原則使用できませんが、「々」をはじめとする一部の踊り字は、歴史的慣習の観点から特別に登録が認められている例外的な存在です。