『ご近所物語』のクライマックスにおいて、読者の心を最も揺さぶったのは、恋と夢の狭間で揺れる少女たちのリアルな葛藤でした。矢沢芸術学院(通称・ヤザガク)で自作ブランド「HAPPY BERRY(ハッピーベリー)」を立ち上げ、情熱を注ぎ込んできた幸田実果子は、学内ファッションショーで見事に最優秀賞を獲得。ロンドンへのデザイン留学という千載一遇のチャンスを掴み取ります。
しかし、それは幼少期から常に隣にいた山口ツトムとの物理的な別れを意味していました。写真家への道を歩み始めていたツトムに対し、実果子は夢を追うことへの罪悪感や寂しさに苛まれます。ここで安易な妥協を選ばず、互いの情熱を尊重したことこそが本作の白眉です。ツトムは実果子の背中を力強く押し、2人は遠距離恋愛という試練を通じて「相手に依存しない自立した個」へと成長を遂げました。
物語のグランドフィナーレ、そして完全版や番外編で描かれた未来において、留学を終えて帰国した幸田実果子と山口ツトムは正式に結婚を発表します。子供の頃からマンションのベランダ越しに呼び合っていた2人が、幾多のすれ違いや挫折を乗り越えて夫婦となる結末は、平成少女漫画史に残る屈指のハッピーエンドとして語り継がれています。