ネット上の園芸フォーラムで頻繁に囁かれるのが、「テーブルヤシは一度花が咲くと寿命を迎えて枯れてしまうのではないか」という不穏な言説です。このテーブルヤシ花が咲いたら枯れる噂の真相を科学的に紐解くと、半分は明確な誤解であり、もう半分は警戒すべき現実を突いています。
まず誤解の側面から言えば、テーブルヤシは一生に一度だけ開花して種子を残し枯死する「一回結実性植物(リュウゼツランや一部のタケ類など)」ではありません。本来は何年も生き続け、環境が合えば毎年のように花を咲かせる常緑低木です。したがって、開花したという事実だけで植物の寿命が尽きることは構造上ありません。
しかし愛好家を戦慄させるもう半分の真実、すなわちテーブルヤシ開花と株の衰弱というメカニズムは極めて切実です。植物にとって「花を咲かせ、種子を作る(生殖成長)」という営みは、葉や茎を伸ばす「栄養成長」に比べて桁違いの炭水化物、窒素、水分を消費します。限られた土壌容積しかない室内植木鉢の中で開花が進むと、葉に蓄えられていた栄養分がすべて花序へ一方通行で吸い上げられてしまいます。
その結果、本来展開するはずだった新芽の成長が完全にストップし、下葉から徐々に葉緑素が抜けて黄色くカサカサに変色・脱落し始めます。耐陰性に優れ、ゆっくりとしか代謝できないテーブルヤシにとって、開花によるエネルギー枯渇は人間でいう「重度の過労状態」に他なりません。特に根詰まり気味の鉢や光量不足の環境で開花を放置した場合、開花後に株全体が急激に活力を失い、そのまま根腐れや枯死へと連鎖していく事例が後を絶ちません。