兵士が軍隊から離脱する背後には、単なる恐怖心にとどまらない過酷な環境要因が重なっています。前線での死傷率が異常に高騰するなか、脱走兵が生まれる最大の理由は「生存確率の極端な低さ」と「指揮官への絶望」です。兵站(補給)が崩壊した部隊では、十分な武器や防弾装備、さらには日々の水や食糧すら支給されず、生身のまま塹壕に放置される事例が後を絶ちません。
加えて、上官による私刑や暴力、さらには兵士を使い捨ての盾のように扱う作戦命令が心理的防波堤を決壊させます。戦闘ストレス反応(急性ストレス障害)によって正常な判断力を奪われた兵士は、もはや「ここに留まっても確実に死ぬ」という確信に至り、たとえ敵前逃亡の罪に問われようとも、生き延びる唯一の賭けとして脱走を選択するのです。