俳優・前野朋哉の知名度を一気にお茶の間へ浸透させた決定打といえば、auの三太郎シリーズCMで演じた「一寸法師役」です。「あの小さな男は誰だ?」とSNS上で大きな話題となり、姿が大きくなって現れた瞬間のコミカルで憎めない演技は、日本中の視聴者に鮮烈なインパクトを残しました。
しかし、一発のCMヒットで終わらないのが前野の真骨頂です。映画界でその名を轟かせた名作『桐島、部活やめるってよ』をはじめ、NHK連続テレビ小説『マッサン』『わろてんか』『カムカムエヴリバディ』など、朝ドラや大河ドラマの常連俳優として確固たる実績を積み上げてきました。
前野の演技が高く評価される理由は、「観客に芝居だと感じさせない圧倒的なリアリティ」にあります。気弱なサラリーマン、お調子者の友人、怪しげな裏社会の人物、どこか哀愁を漂わせる父親役まで、役柄のグラデーションは無限大です。作品の空気を壊さずに独自のスパイスを加えるその技巧は、日本映画・ドラマ界における最高峰のバランサーと呼ぶにふさわしいものです。