インターネット上の質問掲示板やSNSでは、「アイスダンスはジャンプを跳ばないから、シングルやペアから脱落した選手がやる簡単な種目ではないか」という心ない誤解や偏見が散見されます。しかし、これは競技の本質を完全に誤認した見解です。
アイスダンスにジャンプがないのは、運動量が少ないからではなく、氷のブレード全体を使い倒すステップとターンに全精力を注ぎ込むためです。ジャンプの助走で息を整える時間が一切なく、演技時間の3分〜4分間、ほぼノンストップでディープエッジ(氷に対して体を極限まで倒し込む技術)を維持し続けるため、下半身への心肺負荷や筋疲労はシングル競技を凌駕すると証言する指導者も少なくありません。
また、「リフトの高さ制限」についても誤解があります。アイスダンスで男性が頭上高く女性を持ち上げてはいけないのは、危険を避けるためだけではありません。アクロバティックな派手さで観客を沸かせることよりも、男性の腰や肩の高さという狭い空間で、いかに美しく独創的なポージングを連続させられるかという、ダンス本来の芸術性と体幹の強さを競わせるための厳格なルールなのです。