病に冒されながらも、役者としての情熱が消えることはありませんでした。松方弘樹さんのスクリーンにおける実質的な遺作映画となったのは、2017年に劇場公開された映画『ごはん』(安田淳一監督)です。
同作において松方さんは、京都の美しい田園風景と農業を営む人々の営みを見守る重要な語り手(ナレーション・特別出演)として参加。病の影が忍び寄る中で収録されたその声は、力強さと円熟した温かみを併せ持ち、映画ファンに深い感銘を与えました。
また、降板を余儀なくされた2016年の主演舞台『遠山の金さん』は、松方さんが生涯をかけて磨き上げた殺陣と決め台詞をファンに届ける集大成となるはずでした。稽古場で「これが最後の金さんになるかもしれない」と漏らしていたという証言もあり、舞台へ戻る執念こそが闘病の最大の原動力でした。劇場復帰は叶いませんでしたが、その魂は日本映画の黄金期を象徴するアーカイブとして今も燦然と輝いています。