岡藤氏の経営手腕が遺憾なく発揮された象徴的なプロジェクトが、大手コンビニエンスストアチェーンであるファミリーマートの完全子会社化だ。生活に密着した流通・小売業の拠点を自社グループの中核に据えることで、消費者のリアルな購買データとサプライチェーンを一元管理する狙いがあった。
単なる株主としての関与から一歩踏み込み、グループの全リソースを投入して店舗改革を断行。物流の効率化から商品開発、デジタル決済基盤の整備に至るまで、伊藤忠商事が持つ商社機能をフル活用した。激化するコンビニ業界の競争の中で、ファミリーマートのブランド価値を再定義し、収益基盤を強固なものへと育て上げたのだ。
実業に根ざしたこのアプローチは、単なる投資ファンド的なマネーゲームとは明確に異なる。消費者の暮らしに直接届くビジネスを掌握することこそが、総合商社としての持続可能な強みを生み出すという岡藤氏の確固たる信念が、そこには貫かれている。