彼が生涯を通じて戦い続けた相手は、劇界の因習と停滞だった。若き日に経験した劇団の離脱、孤立無援のなかで自ら立ち上げた自主公演。そこで磨かれたのは、誰にも頼らず観客の支持だけを頼りに生き抜く雑草のような強靭さだ。「筋書を読まなければ理解できない芝居は本物ではない」。そう言い切る徹底した観客第一主義こそが、彼の原点だった。
旧弊に囚われた批評家たちからどれほど眉をひそめられようとも、劇場の熱狂が彼の正しさを証明していた。単なる奇抜な演出ではない。徹底した古典の解体と再構築。その根底にあったのは、江戸の庶民が熱狂した歌舞伎本来の野性味を取り戻すという、誰よりも純粋で狂気じみた情熱だった。