本作の脚本を手掛けたのは、後に社会派ドラマを次々と世に送り出す野島伸司だ。彼の鋭利な筆致は、単なるシンデレラストーリーの逆版ではなく、人間の深層心理に巣食う孤独と再生を描き出した。
ヒロインのチェロ奏者・矢吹薫を演じた浅野温子の存在感も傑出していた。当時、トレンディドラマのトップ女優として君臨していた浅野が、崩れ落ちるように泣き叫び、頑なに閉ざしていた心を開いていく過程は圧巻の一言に尽きる。美しいチェリストと、風采の上がらない男。ビジュアルの落差が大きければ大きいほど、心を通わせた瞬間のカタルシスは爆発的なものとなった。
野島伸司による計算し尽くされたセリフ回しと、役者陣の感情が極限までぶつかり合ったからこそ、あの虚構は現実を超える説得力を持った。