結論から言えば、現代の病理学的推計において暗殺説を裏付ける確たる証拠は存在しない。有力視されているのは、多臓器の機能低下を伴う悪性腫瘍(がん)、あるいは長年の慢性骨髄炎に起因する全身衰弱(カヘキシー)である。
死の数か月前から、官兵衛は京都伏見の屋敷に病床を構えていた。当時の記録『黒田家譜』や公家の日記には、激しい頭痛、発熱、全身の浮腫、そして激しいやせ衰えが克明に記されている。特に晩年は食事が喉を通らず、皮膚の潰瘍が悪化していた形跡がある。医学的知見からこれらの臨床症状を総合すると、末期がんによる全身衰弱、あるいは重篤な感染症に伴う敗血症や多臓器不全が死に至る直接の引き金になった可能性が極めて高い。