拝殿の奥深くに祀られている主祭神は、大己貴命(おおなむちのみこと)。出雲大社の大国主大神と同体とされる国造りの神であり、国土開発、農業、医薬、そして人間関係を豊かに結ぶ神徳で知られる。
砥鹿神社における大己貴命の信仰は、単なる現世利益の追求にとどまらない。古くから「福徳円満の神」「縁結びの神」として親しまれる背景には、荒廃した土地を整え、人々に生きる知恵を授けたとされる神話の原体験がある。人と人との絆を結び直す力、事業の基盤を強固にする力、そして心身の病を癒やす力。境内に漂う厳格な空気の底には、包み込むような慈愛が満ちている。
境内には恵比須社も配され、事代主命(ことしろぬしのみこと)が祀られている。大己貴命と事代主命による「親子の神」が揃い踏みすることで、家内安全や商売繁盛の御神徳はさらに倍加すると信じられてきた。節目の決断を控えた経営者や、人生の転機に立つ人々が全国から引きも切らず参拝に訪れる理由は、まさにこの重厚な霊威にある。