漫画家の職業病として最も広く知られているのが重度の腰痛と頸椎・手首の障害です。同じ前傾姿勢を毎日十数時間維持し続けるため、椎間板ヘルニアや坐骨神経痛に苦しむ作家は枚挙にいとまがありません。
『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博氏が自筆メッセージで「机に向かって絵が描けない」「仰向けに寝た状態でしかペンが握れない」と告白したエピソードは、連載作家の肉体破壊の凄まじさを象徴しています。慢性的な激痛は作家から睡眠を奪い、精神的な抑うつ状態を引き起こすトリガーにもなります。
腱鞘炎によってペンが握れなくなれば、湿布や痛み止めを乱用して麻痺させながら原稿に向かう作家も少なくありません。痛みを抑えるための鎮痛剤の過剰服用が胃腸障害を引き起こし、さらなる体調悪化を招くという負の連鎖が起きています。2020年代以降、人気作の「体調不良による休載」が目に見えて増加しているのは、作家たちの肉体がとうに限界を超えている証左に他なりません。