薬局の棚に並ぶ目薬を手に取る際、多くの利用者が最も期待するのは「塗れば、あるいは差せばすぐに引く」というスピード感でしょう。しかし、ものもらい市販薬即効性の真相を臨床的な観点から言えば、点眼直後に腫れが雲散霧消するような即効性は薬理学的にあり得ません。
一般に「ものもらい」と総称される疾患の大半は、まぶたの皮脂腺やまつ毛の根元に黄色ブドウ球菌などが感染して起こる急性化膿性炎症(麦粒腫)です。市販の抗菌目薬の主力を担うのは、細菌の葉酸合成を阻害して増殖を止めるスルファメトキサゾール配合目薬です。このサルファ剤に加え、抗炎症成分であるグリチルリチン酸二カリウムや、かゆみを抑えるイプシロン-アミノカプロン酸などが配合されています。
これらの成分は、患部の細菌増殖を食い止め、生体の免疫機能が細菌を排除するのを後押しする薬剤です。点眼を開始してから細菌数が顕著に減少し、組織の腫脹が引き始めるまでには、通常48時間から72時間程度のプロセスを要します。「差した翌朝に跡形もなく治っていた」という体験談がネット上で散見される背景には、薬効そのものだけでなく、初期段階で自己免疫が優位に立ち、軽微な炎症の段階で自浄されたケースが多く混在しています。即効性を過信して短時間に何滴も過剰点眼することは、結膜や角膜の上皮を傷める二次被害につながるため厳に慎まなければなりません。