生物学的な分類において、エビやカニは「節足動物門・甲殻亜門」に属し、イカやタコは「軟体動物門・頭足綱」に分類されます。外見も進化の系統も大きく異なるため、「甲殻類アレルギーでイカは食べられるか」という疑問に対し、一般には「別種だから問題ない」と誤解されがちです。しかし、免疫学の世界では全く異なる現実が突きつけられます。
その鍵を握るのが、筋肉の収縮を制御するタンパク質トロポミオシン(Tropomyosin)です。エビの主要アレルゲン「Pen a 1」やカニの「Cha f 1」はいずれもトロポミオシンであり、イカ(Tod p 1など)のトロポミオシンとアミノ酸配列が約50〜70%一致しています。人間の免疫システムであるIgE抗体は、この酷似した分子構造を見分けることができず、「エビが入ってきた」と誤認してヒスタミンなどの化学物質を放出し、アレルギー反応の引き金を引いてしまいます。これがトロポミオシン交差反応の理由です。
日本アレルギー学会専門医の臨床報告によると、エビアレルギーと診断された患者がイカやタコに対して血液検査上の陽性(感作)を示す割合は約50%以上に達し、実際に口にして臨床症状を発症する確率も20〜40%前後に及ぶと報告されています。「エビがダメならイカも警戒する」というのが、アレルギー専門医療における鉄則です。