藤原啓治さんが2016年8月に突然の病気療養を発表した際、アニメ・吹替業界に走った激震は計り知れないものでした。所属事務所(AIR AGENCY)より療養理由が病気治療である旨が明かされ、当時放送中・制作中だった多くのレギュラー作品が急遽、代役の手配に追われることとなりました。2017年には一部の仕事へ段階的に復帰を果たしたものの、2020年4月12日、食道癌のため55歳の若さでこの世を去りました。
藤原さんが演じてきた人物像は、飄々としていながら芯が強い父親、どこか影を背負った歴戦の戦士、あるいは圧倒的なカリスマ性を持つ皮肉屋など、替えの利かない絶妙なニュアンスを孕んだ役柄ばかりでした。それゆえに、後任を務めるキャストには計り知れないプレッシャーがのしかかりました。
公式発表資料や各配給元のクレジットを振り返ると、後任には森川智之、山路和弘、津田健次郎、利根健太朗、小西克幸といった、声優界でも屈指の実力派や、生前の藤原さんと深い絆で結ばれていた役者たちが抜擢されています。彼らは偉大な先人の芝居を深く研究しつつ、作品の世界観を壊さない真摯なアプローチで役を全うしてきました。