やなせたかしが戦争で見た絶望とは|アンパンマン誕生の真実と正義

やなせたかしが戦争で見た絶望とは|アンパンマン誕生の真実と正義

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戦争が終結した1945年(昭和20年)8月15日、やなせはもう一つの決定的な絶望を味わいます。それまで「聖戦」と称され、鬼畜米英を倒すことこそが絶対の正義だと教え込まれていた価値観が、敗戦と同時に180度ひっくり返った瞬間でした。昨日まで戦争を賛美していた大人たちが、手のひらを返してアメリカの民主主義を絶賛し始める姿を目の当たりにし、やなせは痛烈な不信感を抱きます。

「正義のための戦いなんてどこにもない。正義はある日突然逆転する。しかし、どんな国であっても、どんな思想信条であっても、飢えて死にそうな人に食べ物を分け与えることだけは、絶対に揺らがない正義だ」

この思索の果てに辿り着いた結論が、アンパンマンの行動規範となりました。一般的な特撮ヒーローや少年漫画の主人公は、圧倒的な武力で悪を打ち倒し、自らは無傷のままで勝利を収めます。しかし、やなせはそのようなヒーロー像を断固として拒絶しました。

アンパンマンが「自らの顔をちぎって食べさせる」理由。それは、「本当の正義を行う者は、自らも深く傷つかなければならない」という過酷な真実を表現するためでした。自分のエネルギーそのものであるアンパンを差し出せば、自らの力は半減し、顔が欠けて飛ぶことすらままならなくなります。それでもなお、目の前で空腹に泣いている者を救うために身を削る。この姿こそが、戦争という地獄を見たやなせたかしの辿り着いた「正義の味方の本心」でした。

中島 亮太
著者

中島 亮太

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。