たこつぼ型心筋症は、1990年に日本の臨床現場で初めて症例が報告された心疾患です。心臓のメインポンプである左心室の先端部(心尖部)が収縮しなくなり、逆に基部だけが過剰に収縮する現象が起こります。この時、心臓の造影検査を行うと、先端がぷっくりと膨らみ、首の部分がくびれた蛸壺(たこつぼ)のような独特のシルエットを描くことから命名されました。
医学的には「左室心尖部バルーニング」と呼ばれるこの特異な形態異常は、心臓を巡る太い冠動脈に目立った閉塞や狭窄がないにもかかわらず発生します。海外でもその病態から「Takotsubo syndrome」または「ブロークンハート症候群」として定着し、精神的ショックが引き金となる心臓疾患の代表格として国際ガイドラインが策定されるに至っています。