銀座国際ホテルが営業を終了したのは2021年5月31日のことでした。閉館の一報が流れた直後、ネット掲示板やSNSでは「経営破綻による倒産ではないか」「外資系ファンドによる強引な買収・立ち退きがあったのではないか」など、さまざまな憶測が飛び交いました。しかし、商業登記や関係者への取材から浮かび上がる実態は、より構造的かつ現実的な経営判断によるものです。
最大の要因は、建物の老朽化と耐震基準への適合問題でした。ホテルの竣工は昭和後期であり、半世紀近く風雪に耐えてきた躯体は、配管設備や防災機能を含めて大規模な刷新を迫られていました。特定建築物に求められる耐震診断基準を満たすための改修工事には、数十億円規模の投資が必要と試算されていた背景があります。
そこに追い打ちをかけたのが、2020年春から始まった世界的な渡航制限と国内の移動自粛でした。稼働率が10%台にまで落ち込む月が続いた時期と、耐震改修の最終判断期が重なってしまったのです。運営会社は将来的な収支バランスを慎重に精査した結果、莫大な追加投資を行って既存施設を維持するよりも、事業継続を断念して営業終了を選択する道を選びました。倒産という不測の事態ではなく、建物の物理的限界と市場環境の激化がもたらした計画的幕引きが真相です。