ネット上の情報で最も多く見受けられる誤解が、「海外で売られているパジェロスポーツがそのまま日本に入ってくるのではないか」という混同です。
パジェロスポーツは、トライトンのシャシーをベースに作られた3列シートSUVであり、タイなどの新興国を中心に大人気を博しているモデルです。しかし、これはあくまでピックアップトラック派生の実用的なSUVであり、三菱がかつて築き上げた「パジェロ」という最高峰ブランドの本流とは車格も仕立ても異なります。
三菱が現在進めているプロジェクトは、単なるパジェロスポーツの日本導入(いわゆるトライトンのワゴン版)ではなく、次世代のフラッグシップにふさわしい意匠、高度なPHEVパワートレイン、洗練された操縦安定性を付与した「真の新型パジェロ」の開発です。この2台を同一視してしまうと、予想されるスペックや価格帯を見誤る原因となるため、明確に区別して捉える必要があります。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
数々の情報が錯綜する中で、2026年以降の新型パジェロの登場を心待ちにして予約・購入を検討すべきユーザーと、他の選択肢へ目を向けるべきユーザーの境界線をプロの視点から整理します。
【購入をおすすめできる人】
- 日常はEV、休日はタフな遠出という二面性を求める人:通勤や街乗りは完全な電気走行で静粛かつ低コストにこなし、週末は充電の心配なく豪雪地帯や未舗装路のキャンプ場へ躊躇なく踏み込みたい層には最高の相棒となります。
- ランクルとは異なる先進的な知性を求める人:メカニカルな無骨さだけでなく、電子制御技術と電動パワートレインがもたらす滑らかでハイテクな操縦感覚に価値を見出せるドライバーに合致します。
- アウトドアでの給電機能を重視する人:本格クロカン性能と大容量バッテリーによる給電能力(V2L)を両立した車種は市場にほとんど存在せず、唯一無二の存在となります。
【慎重に検討・見送るべき人】
- 300万〜500万円台の予算でタフな四駆を探している人:新型パジェロはプレミアムセグメントへの移行が確実であり、エントリー層向けの価格設定にはなりません。この場合は中古の4代目パジェロや、現行型トライトン、他社製クロスオーバーSUVを検討するのが現実的です。
- 狭い住宅街や旧来の立体駐車場を頻繁に利用する人:全幅1,900mm超が予想されるため、日本の都市部における日常の取り回しには一定の割り切りと車庫環境の確保が必須です。
【プロの視点】昭和の冒険心から令和の「安心・安全な強さ」への心理的転換
なぜ今、再びパジェロというアイコンが求められているのでしょうか。ここにはモビリティ社会学における興味深い意識の変遷が存在します。
1980年代後半から1990年代の四駆ブーム(RVブーム)において、パジェロは「都会の喧騒を抜け出して未知の自然へ挑む」という、いわば外向きの冒険心と社会的ステータスの象徴でした。パリ・ダカールラリーの砂塵を駆け抜ける姿に、当時のドライバーたちは自らのフロンティアスピリットを重ね合わせていたのです。
対して2020年代半ばを生きる現代のユーザーが大型オフローダーに求めているのは、激甚化する自然災害、異常気象、突発的な豪雪といった日常の脅威から家族を守り抜くという内向きの「心理的シェルター(防護壁)」としての機能です。浸水や悪路、停電といったインフラの寸断に対しても、高いロードクリアランスと強固な車体、そしてPHEVによる自立的な電力供給能力があれば生き残れるという「絶対的安心感」への投資です。パジェロの復活は、単なるレトロ趣味の回顧録ではなく、現代社会が直面する不確実性に対する最適解として、極めて現代的な必然性を帯びて市場に要請されていると言えます。