数々の山口一郎のインタビューにおいて、この楽曲のルーツは彼が生まれ育った北海道・小樽の海や、幼少期の釣り体験に深く根ざしていることが語られています。上京して東京という巨大都市で音楽シーンのトップを走り続ける中で抱えたプレッシャーと孤独。その中でふと蘇る故郷の冷たい海の記憶が、この楽曲の骨格を形作りました。
山口一郎による「ナイロンの糸」制作秘話によれば、歌詞の推敲には膨大な時間が費やされました。単なる感傷的な失恋ソングではなく、都会の中で自己を見失いそうになる人間が、自らの根源的な記憶へと潜水していくドキュメンタリーのような筆致で言葉が選ばれています。この妥協なき言葉選びのプロセスが、普遍的な響きを持つ名フレーズを生み出しました。