かつて脳の血管が破綻した場合、頭蓋骨を大きく切り開く大がかりな開頭手術か、あるいは薬物投与による保存的加療という二者択一に近い状況でした。しかし、医療技術と画像診断の飛躍的な進化により、治療選択肢は劇的に変化しています。
脳出血の外科的治療において主役となりつつあるのが、神経内視鏡を用いた低侵襲手術です。頭蓋骨にわずか数センチの小さな穴を開け、透明な細い筒と内視鏡カメラを挿入。モニターで出血点と正常な神経組織を高精細に確認しながら、吸引管で血腫をピンポイントで除去します。従来の開頭血腫除去術に比べて正常な脳へのダメージが圧倒的に少なく、手術時間の大幅な短縮と早期離床を可能にしています。
さらに、くも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤に対しては、開頭クリッピング術に加え、太ももの付け根や手首の動脈からカテーテルを挿入してコブの内側にプラチナ製コイルを詰める「脳動脈瘤コイル塞栓術」の精度が一段と高まっています。頭蓋骨を開かないため患者の身体的負担が極めて小さく、高齢者や開頭が困難な深部の動脈瘤に対しても有効な手段として定着しています。
加えて、病院到着直後におけるAI画像診断支援システムの導入も救命率の向上に寄与しています。救急搬送された患者の頭部CT・MRI画像をAIが数秒で解析し、微小な出血箇所や血管の閉塞・解離を即座に検出。専門医へのアラートと治療チームの初動を数十分単位で前倒しする体制が整いつつあります。