退職願や退職届を提出する際、総務担当者や上司から「退職理由は定型として『一身上の都合』と書くのが社会人の常識だ」と指示されるケースが後を絶ちません。しかし、この言葉を鵜呑みにして署名・捺印することは、自ら「完全に自分の個人的な希望で勝手に会社を辞めます」と宣言する法的合意に等しい意味を持ちます。これがまさに、一身上の都合と書かない理由の根幹です。
雇用保険制度において、パワハラが原因で離職を余儀なくされた労働者は、倒産や解雇と同様の扱いを受ける「特定受給資格者」に該当します。特定受給資格者として認定されると、失業保険の給付制限なし(待期期間7日間のみ)で受給が開始されるのに対し、自己都合退職(一般離職者)とみなされた場合は原則として1ヶ月〜2ヶ月間の給付制限期間が発生し、無収入の空白期間を耐え忍ばなければなりません。
さらに深刻なのは受給可能日数の格差です。自己都合退職では年齢や被保険者期間にかかわらず90日〜150日程度にとどまりますが、特定受給資格者であれば年齢と勤続年数に応じて最大330日まで給付日数が大幅に拡充されます。これによる総受給額の差は、一般的な給与水準でも50万円から150万円規模に達します。加えて、国民健康保険料の軽減措置(前年の給与所得を30/100として算定)の適用可否にも直結するため、家計への打撃は計り知れません。