「昨日まで普通に動いていたのに、なぜ突然動かなくなるのか」という疑問に対し、現場の保守点検員が一様に口を揃えるガレージシャッター故障の真相は、「不可視部分における金属疲労の蓄積」です。
シャッターを軽々と巻き上げている主役は、モーターの力だけではありません。巻き取りシャフトの内部には強靭なトーションスプリング(巻きバネ)が仕組まれており、これが常にねじられた状態でシャッターの自重と釣り合いを保っています。このスプリングの設計耐用回数は、住宅用規格でおよそ5,000回〜8,000回(開閉往復)と定められています。1日2往復開閉する家庭であれば、約7年〜10年で設計寿命の終盤に差し掛かる計算です。
スプリングが金属疲労によって内部でポキンと折損した瞬間、シャッターのバランスは完全に崩壊します。手動であれば突然鉛のように重くなって持ち上がらなくなり、電動であればモーターに過大な負荷がかかってサーマルプロテクター(過熱防止装置)が作動し、完全に沈黙します。利用者の目には「昨日まで元気だったのに突然壊れた」と映りますが、機構的には数年前から破断へのカウントダウンが着実に進んでいたわけです。
また、メンテナンスにおける一般的な誤解として「潤滑油の誤用」が挙げられます。シャッターがキーキーと鳴り始めた際、手元にある浸透性防錆潤滑油(揮発性の高い機械油)をガイドレール内に吹き付ける利用者が少なくありません。これは一時的に異音を消すものの、既存の固形グリースを溶かし流してしまい、さらには外部の砂埃を吸着して研磨剤のようなペーストを形成します。結果としてスラットの摩耗を急激に早める致命傷となります。可動部には必ずメーカー指定の「シリコン系ドライルーブ」またはシャッター専用グリースを使用することが長寿命化の前提条件です。