いつも絶妙なタイミングで好機に恵まれる人は、一体何が違うのか。多くの人が抱くこの疑問に対し、英ハートフォードシャー大学の心理学者リチャード・ワイズマン博士が行った著名な追跡実験が明確な回答を示しています。博士は自分を「運がいい」と感じている人と「運が悪い」と感じている人を集め、新聞を渡して「掲載されている写真をすべて数え上げよ」という課題を与えました。
結果は驚くべきものでした。運が悪いと自認する被験者が写真のカウントに平均数分を費やしたのに対し、運がいいグループの多くはわずか数秒で作業を終えたのです。その理由は、新聞の2ページ目に大見出しで「数えるのをやめなさい。この新聞には43枚の写真があります」と巨大なメッセージが印刷されていたためでした。さらに紙面の中盤には「数えるのをやめて試験官に告げれば、250ポンドの賞金を獲得できる」というボーナス指示まで潜ませてありました。
運が悪いグループは「写真を数える」という狭い目的に過剰集中(視野狭窄)していたあまり、目の前の明らかなチャンスを見落としました。一方で、運がいいグループはリラックスした状態で視野を広く保ち、予期せぬ情報に気づく能力が高かったのです。
脳科学の観点からも、この現象は脳幹に位置する網様体賦活系(RAS)のフィルタリング機能で説明がつきます。脳は毎秒押し寄せる膨大な情報から、本人が「重要」と信じ込んでいる情報だけを意識に浮上させます。「自分は運がいい」という前提を持っている人の脳は、無意識のうちに好機や解決策の糸口を感知するように初期設定されています。脳科学者の西剛志氏が指摘するように、「運を作る思い込み」は単なる精神論ではなく、脳の情報処理システムを効率化させる具体的なメカニズムなのです。