「さんぴん茶」という独特の響きを持つ名前は、どこから生まれたのか。その歴史を紐解くと、かつて東南アジアや中国大陸を結ぶ中継貿易で繁栄を極めた琉球王国(1429年〜1879年)の時代へと行き着きます。
歴史文献や沖縄県立博物館の資料によると、14世紀から16世紀にかけての大交易時代、琉球は中国(明・清)との間で活発な進貢貿易を行っていました。その際、中国福建省などから伝来したのが、ジャスミンの花で香り付けされたお茶「香片茶(シャンペンツァー/シャンピエン)」でした。当時の琉球の人々の耳に「シャンペン」という発音が「サンピン」と心地よく響き、やがて庶民の間で親しみを込めて「さんぴん茶」と呼ばれるようになったと伝えられています。
なぜ緑茶ではなく香片茶がこの島に定着したのかという点について、食文化の研究者らは「保存性と気候の相性」を指摘します。冷蔵設備のない時代、本土から船で運ばれる無発酵の緑茶は、沖縄の強烈な湿気と暑さですぐに酸化し、風味が劣化してしまいました。これに対し、適度に発酵させた茶葉に花の薫香をしっかりと吸着させた香片茶は、過酷な海上輸送や長期保管を経ても鮮烈な香りを保ち続けました。厳しい気候風土に適応した必然の選択が、数百年を経て伝統の味へと昇華したのです。