街中や公共施設に設置されているAED(自動体外式除細動器)は、心肺停止を起こした患者すべてに電気ショックを与える装置ではありません。突然死の主要な原因である「心室細動(VF)」や「無脈性心室頻拍(pVT)」と呼ばれる、心臓が細かく痙攣して血液を送り出せなくなった状態を自動で検知し、強力な電気ショックでリセットする医療機器です。
AEDの操作自体は極めて平易であり、電源を入れれば(またはフタを開ければ)音声ガイダンスが全ての手順を指示してくれます。電気ショックが必要か否かは機械が100%判断するため、ショックが不要な状態(心静止など)の患者に誤って通電されるリスクは原理的にゼロです。
【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
しかし、実際の救命現場では、機器の性能とは別の「心理的バウンダリー(心理的障壁)」が立ちはだかります。特に女性が倒れていた場合、「下着を外さなければならない」「服を脱がせることでセクハラと疑われないか」という過度な懸念から、AEDの装着が躊躇されるケースが社会的な課題として顕在化しています。
実態として、AEDの電極パッドは右鎖骨の下と左脇腹に貼る構造になっており、衣服を完全に全裸にする必要はありません。衣服の間から肌に滑り込ませて貼り付ける、下着を少しずらす、あるいは上から上着を掛けて肌を隠す配慮を行えば十分です。日本の現行法において、救命活動のために服を脱がせたり骨折させたりした行為は、刑法第37条の「緊急避難」や民法上の緊急事務管理として保護され、民事・刑事上の責任を問われることは法的にあり得ません。「躊躇した数分」が、命を永遠に奪う結果につながるという現場感覚を忘れてはなりません。