サンバーストのレスポールが「木目の揺らぎ」や「赤色のフェイド(褪色)」で愛好家を惹きつけるのに対し、ゴールドトップの魔力は、塗装そのものが辿る劇的な化学変化にある。その最たるものが「緑青(グリーンニング)」と呼ばれる現象だ。
1950年代のギブソン工場において、ゴールドトップの塗装には一般的な金色の顔料ではなく、「ブラスパウダー(真鍮の微粉末)」を透明なニトロセルロースラッカーに直接混ぜ合わせた塗料が使われていた。真鍮は銅と亜鉛の合金である。長年にわたってギタリストが右腕をボディに乗せてピッキングを繰り返すことで、ラッカーに無数の微細なクラック(ウェザーチェック)が入り、そこから汗に含まれる水分、塩分、皮脂の酸が内部のブラス粉へと浸透していく。
結果として生じるのが、銅が酸化して発生する緑色のサビ、「塩基性炭酸銅(緑青)」である。新品時には眩いばかりに輝いていたゴールドフィニッシュが、右肘の当たるボディエッジやコントロールノブの周辺から、深みのあるエメラルドグリーンへと徐々に侵食されていく。一般的な工業製品であれば「塗装の腐食・劣化」として不良品扱いされる現象が、エレキギターの世界では「プレイヤーの魂が刻み込まれた唯一無二のアート」として極めて高い評価を受ける。
ギブソン・カスタムショップの最高峰部門である「マーフィー・ラボ(Murphy Lab)」が、特殊な気候テストと化学処理を用いてこの緑青とクラックを人為的に再現するエイジド加工に心血を注いでいることからも、この変色がいかにギタリストの美意識を刺激しているかがわかる。