勧誘者たちが放つ特有の「薄気味悪さ」の背景には、心理学的な境界線の侵害(バウンダリー・バイオレーション)が存在します。健全な人間関係では、初対面から時間をかけて自己開示の深度を深めていくのが自然なプロセスです。ところが、彼らは初対面からプライベートな価値観や年収、家族構成にまで土足で踏み込んできます。
この不自然な態度は、自己啓発セミナーやマルチ組織内で徹底して叩き込まれる「ラポール(信頼関係)形成の強制テクニック」に起因します。相手の仕草を真似るミラーリングや、過度な共感、大げさなリアクションを意図的に繰り出すことで、ターゲットの無意識の警戒心を解こうと画策します。しかし、内面に伴わない作為的なテクニックは、受ける側に「表情と感情が一致していない」という不気味の谷現象を引き起こします。
社会学的な視座から見れば、彼ら自身もまた組織の同調圧力や「自由を手に入れた成功者であらねばならない」という強迫観念に囚われた被害者の一面を持っています。自身の選択を正当化するため、新たな仲間(カモ)を組織に引き入れ続けなければならない心理的防衛機制が働いており、その必死さが「瞳の奥の冷たさ」となって相手に伝播してしまうのです。