SNSや口コミサイトで上野学園ホールのチケット座席を確認したファンから頻繁に上がるのが、「1階後列は埋もれて見えないのではないか」「2階席は遠すぎて置いてけぼりを食らうのでは」という懸念です。さらに「多目的ホールゆえに音響がこもりやすい」という噂も散見されます。これらの真偽を劇場の建築構造から検証します。
まず1階席の視界についてですが、1列目から7列目付近までは床の傾斜がほぼフラットに設計されています。そのため、前方に体格の良い観客が座った場合、センターの視界が頭部で遮られる「視界被り」が生じやすい傾向があります。一方で、8列目から9列目を境にしっかりとした階段状の段差が設けられており、15列目前後の中段エリア以降は前の人の頭越しにステージ足元まで良好な視界が確保されます。「後列だから見えない」というよりは、「前方フラットエリアのほうが周囲の座高に左右されやすい」というのが劇場の物理的な実態です。
続いて2階席の評判です。「見えない」と表現される主因は、ステージとの絶対的な高低差にあります。2階席はバルコニーのように前方にせり出しつつ、奥に向かってかなり急な傾斜がつけられています。ステージを見下ろす角度(俯瞰視点)が強いため、舞台全体のフォーメーションや照明演出を把握するには最適ですが、演者の表情を肉眼で見極めることは不可能です。また、2階最前列(1列目)に関しては、転落防止用の安全柵(手すり)が目線の高さと重なる瞬間があり、座高によっては「手すりが演者の足元や下半身に被る」という現象が起きます。
音響に関する評判はどうでしょうか。クラシック専用のシューボックス型ホールと比較すると、残響時間は適度に抑えられたデッド寄りのチューニングです。この音響特性はオーケストラの豊かな残響を求めるクラシックファンからは「響きがタイトすぎる」と評されることがある一方、ポップスやロック、演劇のセリフにおいては「ボーカルや歌詞の輪郭が明瞭に聴き取れる」という高い評価につながっています。近年はスピーカー設備やPA技術の進化もあり、1階・2階ともに極端な音割れやデッドポイント(音が著しく減衰する場所)は大幅に改善されています。