馬の平熱は一般的に37.5度から38.2度の範囲に収まる。人間(36度台)よりも約1度から1.5度高い。この事実を初めて知るファンは少なくない。サラブレッドの巨大な心臓は1分間に約30〜40リットルもの血液を全身へ送り出し、膨大な筋肉組織が常に熱を産生している。公益社団法人日本獣医師会の学術知見でも示されている通り、この平熱帯を維持することこそが、消化器官や呼吸器系を正常に働かせるための絶対条件となる。
重要なのは「個体ごとの平熱」を把握しているかどうかだ。ある馬にとって37.8度が平常値であっても、別の馬にとっては38.2度が標準である場合がある。獣医学の観点から見れば、朝と夕方で体温が0.5度程度変動する日内変動も自然な現象だ。だが、日頃のベースラインを知らなければ、その変動が疲労によるものなのか、病魔の兆候なのかを見分けることは不可能に近い。
体温が38.5度を超えた瞬間、現場には鋭い緊張が走る。人間で言えば37度前後の「少し体がだるい」程度の微熱に思えるかもしれない。しかし、馬の身体にとってこの0.5度の上昇は、体内で激しい炎症反応や感染症との戦いがすでに始まっている決定的な証拠となる。