鬼隠し編の作中には、読者をミスリードへと誘う数々の象徴的なシーンが存在します。それらの伏線が解答編でどのように回収され、いかなる意味を持っていたのかを検証します。
読者に決定的なトラウマを植え付けた「おはぎの針」事件。レナと魅音が手作りして届けてくれたおはぎを食べた圭一は、口の中に激痛を感じ、中から裁縫針が見つかったと認識しました。しかし、この事件の真実は「和からし(またはタバスコ)を入れたロシアンルーレット風のイタズラ」でした。普段の部活で行われている他愛のない罰ゲーム感覚の悪ふざけだったものが、レベル5に達しつつあった圭一の狂気と触覚の幻覚によって、金属の針が仕込まれていたと錯覚されたのです。
また、シリーズ屈指の名場面として知られるレナの絶叫「嘘だッ!!!」。ゴミ山でバラバラ殺人の現場を探していた圭一が、背後に立ったレナから「何を探していたの?」と問われ、「何も隠していない」と誤魔化した瞬間に放たれた怒号です。初見では「秘密を知られた怪異が本性を現した瞬間」と受け取られがちですが、この言葉の真意は全く異なります。
レナ自身、かつて両親の離婚や環境変化によって雛見沢症候群を発症し、茨城県の学校でガラスを割るなどの暴行事件を起こして村へ戻ってきた過去がありました。「隠し事や疑心暗鬼がどれほど人を壊すか」を身をもって知っているレナだからこそ、圭一が自分たちに嘘をつき、心を閉ざそうとしている姿に耐えかね、魂の底から放った必死の制止だったのです。
さらに、圭一の背後からついてくる「もう一つの足音」は、寄生虫の影響による自律神経失調に伴う血流音の錯覚、あるいは後に明かされる村の守り神の本体・羽入の足音でした。殺害予告のように思えた脅迫文も、部活の遊び心で書かれたメモの文面を、圭一の妄想が危険なサインとして曲解したものでした。