騒動が勃発したのは2016年3月上旬のことでした。株式会社DYMが福利厚生の一環として実施した社員旅行先、タイ中西部のリゾート地ホアヒン(Hua Hin)のビーチにおいて、前代未聞のトラブルが発生しました。
目撃者の証言や現地報道によると、宿泊先ホテルのプライベートビーチ付近で深夜まで酒宴を続けていた同社男性社員ら約30名(報道によっては数十名規模)が、突如として身につけていた衣服を脱ぎ捨て、全裸の状態で海へ飛び込んだり砂浜を走り回ったりする奇行に及びました。集団で奇声を上げ、互いの身体を煽り立てる様子は、近隣の宿泊客や現地住民によって目撃され、スマートフォンなどで写真や動画が撮影されることとなりました。
この行為が瞬く間に国際的炎上へと飛び火した背景には、タイ固有の歴史的・文化的背景が存在します。現場となったホアヒンは、バンコク近郊の一般的な歓楽街とは根本的に性格が異なり、歴代のタイ王室が離宮(クライカンウォン宮殿=「憂いなき宮殿」の意)を構える「格式高い由緒ある王室保養地」として知られています。地元住民にとって極めて神聖かつ静寂が重んじられる土地であり、タイ人にとって王室への敬意と公序良俗は絶対的な一線を画す価値観です。
翌朝、砂浜での全裸乱痴気騒ぎの写真がタイのSNS上に投稿されると、現地ユーザーの間で「神聖なホアヒンの海を侮辱した」「外国人観光客による著しい不法行為だ」と激しい怒りが爆発しました。タイの主要テレビ局や大手日刊紙が相次いでトップニュースとして報じ、事態を重く見たタイ警察は公然わいせつ罪などの容疑で即座に本格捜査を開始。タイ観光・スポーツ省の大臣までもが公式声明で強い遺憾の意を表明し、旅行を手配した現地旅行会社やガイドに対する調査が行われるなど、一企業の不祥事を超えた外交問題寸前の事態へと発展しました。