トンボを描く上で最大の難所とされるのが、羽の透明感と胴体の鮮やかなグラデーションです。水彩絵の具を使う場合、ベタ塗りを避け、「ウェット・オン・ウェット(濡らした紙に色をにじませる技法)」と「白抜き」を効果的に組み合わせる必要があります。
羽の透明感を表現する際、決して羽全体を白やグレーで塗りつぶしてはいけません。以下の手順を踏むことで、光を透かした繊細な羽が再現できます。
1. 羽のアウトラインを薄い鉛筆で薄く下描きし、中をきれいな水を含ませた筆で軽く濡らす。
2. 水が乾く前に、ごく薄い水色や黄緑、または背景の夕焼け色(薄いオレンジ)を筆先に少しだけ取り、羽の根元と縁にフワッと乗せてにじませる。
3. 完全に乾いた後、極細の丸筆(0号〜1号)や細芯の耐水性ミリペンを使い、細かな網目模様(翅脈)を一定のリズムで描き込む。
4. 最後に、羽の表面で光が反射しているハイライト部分に、白色の不透明水彩(またはポスターカラー)を細い線で一筋入れる。
胴体の着色では、アキアカネ(赤とんぼ)なら鮮烈な朱色と茶褐色の混色、オニヤンマなら鮮やかなレモンイエローと漆黒のストライプ、ギンヤンマなら胸部のエメラルドグリーンと腹部のコバルトブルーの対比を強調します。下地の色が半乾きのうちに隣り合う色を置くことで、生き物ならではの艶やかな質感が生まれます。