千昭の「未来で待ってる」に対し、真琴は満面の笑みと涙が入り混じった表情で「うん。すぐ行く、走って行く」と答えます。この短い掛け合いには、本作が描いてきた青春のモラトリアムからの脱却という極めて重厚なテーマが集約されています。
物語の冒頭から中盤にかけての真琴は、プリンを食べられたことや小テストの失敗、気まずい人間関係の衝突など、あらゆる不都合を「タイムリープによる時間の巻き戻し」で回避してきました。これは心理学でいう「退行」や「現実否認」の防衛機制そのものです。しかし、時間を都合よくやり直す行為は他人の時間を奪い、親友である津田功介の事故を引き起こすという痛烈な代償を招きました。
自らの過ちと向き合い、大切な人との永遠の別れを経験した真琴は、もはや時間を巻き戻して過去へ逃げることを選びません。「走って行く」という言葉は、タイムリープという超常的な力に依存せず、自らの足で、不可逆な一秒一秒をしっかりと踏みしめて未来へ向かうという宣誓に他なりません。
「Time waits for no one(時は誰も待ってくれない)」という劇中の黒板に書かれた標語に対し、千昭は「未来で待ってる」と告げ、真琴は「走って行く」と応じた。時間が人を待たない絶対的な現実の中で、愛する人が待つ未来に向かって自発的に走り出す姿勢こそが、真琴が獲得した真の大人への成長でした。